預言者ムハンマド伝(3/12):啓示の始まり

セクション :
43 2019/06/24 -0001/11/30

預言者はこの時期から、心地よい正夢を見始めていました。また彼は俗世間から離れる必要性を感じ始め、マッカ郊外の岩山にある洞窟へ赴いては瞑想を行なっていました。彼は食料を持ち運んではそこに数日間留まり、その後家に戻っては食料を補給し、またそこへ戻ったのです。日中の灼熱、そして夜間の澄んだ空のなか、まるで目を貫くかのような星々の輝きに、彼の本質は宇宙の‘しるし’に満たされました。それは、それらの‘しるし’の内に既に内在する、啓示の仲介者としての適切な役割を果たすための準備期間だったのでしょう。つまりそれは預言者の務めであり、彼の民、そして全人類に対する神の真実の宗教の伝道のことです。


それはライラトル=カドル、または‘神威の夜’として知られる、聖月ラマダーンの最後にさしかかったある日の夜に起こりました。

 

ヒラーの洞窟(上空からの眺め)。預言者ムハンマドはこの洞窟で頻繁に瞑想を行なっていました。ここでクルアーン最初の啓示が彼にもたらされたのです。

 

預言者ムハンマドはヒラーの洞窟で瞑想に没頭していました。彼は突如、啓示の天使でありイエスの母マリアをも訪れたガブリエルの降臨を見、彼によって締め付けられました。そして‘イクラア!’―‘読め’と命じられたのです。読み書きの出来なかった彼は言いました:‘私は読むことが出来ません!’しかしその命令は更に二回繰り返され、預言者はその都度同じ返答をしました。最終的に、彼は天使のとてつもない力によって締め上げられた後に解放され、それからクルアーンの最初の節が彼に啓示されたのです:


 “読め、創造なされる御方、あなたの主の御名において。一凝血から、人間を創られた。読め、あなたの主は、最高の尊貴であられ、筆によって(書くことを)教えられた御方。人間に未知なることを教えられた御方である。”(聖クルアーン 96:1−5)


こうして、神による人類への最後の啓示にまつわる壮大な物語が始まったのです。14世紀前のアラブ人の興隆は、それまで歴史的に全くの空白だった地帯から人々を地球上に拡散させ、何千万人という規模の人々に影響を与え、大都市、大帝国を築き上げ、強大な軍隊の衝突を刺激し、それまで未知だった美と輝きが砂埃の中から引き起こされたのです。またそれは大衆を楽園の諸門へと導き、その更なる先の至福に満ちた展望をもたらしました。ヒジャーズの峡谷にこだましたイクラアという言葉は、それまでの世界の固定概念を破壊し、そして岩々の中に隠遁していたこの一人の男に、山々に下されたのであればそれらは木っ端微塵に砕け散ったであろう程の責務を与え、彼はそれを両肩に背負って立ち上がったのです。


預言者ムハンマドは40歳に達しており、熟年期に入っていました。この遭遇の強い衝撃により、彼の実体は溶けてしまったという主張もある程です。彼は光によって焼き尽くされた皮膚のようになり、山を下りてその妻ハディージャの両腕に助けを求めたその男と、山を登る前の彼は別人のようになりました。


しかしムハンマドはその時、あたかも追われている男のようでした。山を下りようとしたムハンマドに、大いなる声が聞こえて来たのです:‘ムハンマドよ、汝は神の使徒であり、我はガブリエルなり。’彼が空を見上げると、天使が空を覆っていました。彼がどこに行ってもその姿は見え、逃げることは不可能でした。彼は帰途を急ぎ、ハディージャに叫びました:‘私を覆い隠してくれ!私を覆い隠してくれ!’彼女は彼を横たわらせ、外衣で包みました。少し落ち着きが戻って来ると、彼は何が起こったかを彼女に話しました。預言者は恐怖に震えていたのです。彼女は彼を抱擁し、励ましました:


 “いいえ!神に誓って、神はあなたの名誉を傷つけるようなことはなされません。あなたは親族との良い関係を保ち、貧者を養い、来客を寛大にもてなし、困窮者を援助するではありませんか。”(サヒーフ・アル=ブハーリー


彼女には、その徳と誠実さ、正義感、慈善心から、夫が神によって恥をかかされるような男には見えなかったのです。この地球上で最初に彼を信じたのは彼の妻ハディージャでした。直ちに彼女は聖書学者である叔父のワラカに会いに行きました。彼女の夫の経験を聞いた後、ワラカは聖書の予言にあるように、彼が待望された預言者であることを認知し、洞窟で彼が見たのは啓示を担う天使のガブリエルであることを確認したのです。


 “それはモーゼを訪れた、秘密の守護者(ガブリエル)である。”(サヒーフ・アル=ブハーリー


その後、預言者には生涯に渡って啓示が下されました。それらは彼の教友たちによって記憶され、羊の革片などに書き留められました。


クルアーン、または“朗誦するもの”

ガブリエルによってムハンマドに下された言葉は、ムスリムによって神聖であると見なされ、彼自身が話した言葉とは厳格に区別されるため、混同されることはありません。前者は聖典クルアーンであり、後者はハディース、または預言者のスンナと呼ばれるものです。天使ガブリエルは、読み書きが出来なかった預言者に対して、口頭でクルアーンを朗誦したため、聖典はアル=クルアーン(“朗誦するもの”)として知られています。