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わが慈悲、わが怒りに優れり(2/2)
たとえ戦時でも
イスラームにおける慈悲は、戦時であれ和平であれ、敵側にまで及びます。預言者ムハンマドは彼の教友たちに対して、まだ不信仰者であった親族に対し、イスラームへの呼びかけや、贈り物をするなどしてその絆を保つよう勧めたからです。
また神はムスリムに対し、もし敵が戦時中に自陣に避難して来た場合、その要求に答えるよう命じられています。クルアーンでは次のように述べられています:
“もし多神教徒の中に、汝に保護を求める者があれば保護し、アッラーの御言葉を聞かせ、その後彼を安全な所に送れ。これは彼らが、知識のない民のためである。”(クルアーン 9:6)
ま た預言者に関しては、彼が教友たちに対して老人や負傷者、女性、子供、そして崇拝の場にいる人々に危害を加えることを禁じたことが知られています。また戦 地を破壊することも禁じられました。また敵の死体を損傷することは厳しく禁じられており、敬意をもって速やかに埋葬することが命じられています。
預 言者による捕虜に関する命令は、彼の教友たちによって厳正に実践されました。ある捕虜によって伝えられた逸話には、戦闘の際にムスリムによって捉えられた 際の捕虜の状況が述べられています。彼はあるムスリム一家と共に過ごし、彼らは食事の時間になると、彼(捕虜)にパンを与えて優待しましたが、彼ら自身は ナツメヤシしか食べなかったのです。
他にも、預言者(彼に神の慈悲と祝福あれ)がクライシュ族との争いにおいて勝利した暁にマッカへ無血入城した際、彼は彼らに近づいて、こう尋ねました:
“あなた方は、私にどのような対応を望むのか?”
彼らは答えて言いました:“あなたは高貴な兄弟であり、高貴な兄弟の息子でもあります。我々はあなたから善い事しか期待していません。”
それから預言者は宣言しました:“私はユースフ(預言者ヨセフ)が彼の兄弟たちに対して言ったことと同じことを言おう:
“今日あなた方を、(取り立てて)咎めることはありません。アッラーはあなた方を御赦しになるでしょう。かれは慈悲深き御方の中でも最も優れた慈悲深き御方であられます。”(クルアーン 12:92)
行きなさい、あなた方は自由の身なのですから。”
寛容さや慈悲が全く予想されなかったこの日、預言者はイスラームの教えが伝道され始めて以来十三年間にも渡って続いたムスリムたちへの残酷な虐待と追放の数々を恩赦し、全ての捕虜の身代金を受け取ることなく無条件で解放することにより、慈悲と寛大さの模範を示したのです。
神のあらゆる創造物に対する慈悲
動物たちもまた、イスラームにおいて多くの権利を享受しています。例えば預言者は顔に烙印を押されたロバを見かけた時、こう言いました:
“あなたは、動物の顔に烙印を押す者、またはその顔を殴る者を私が呪ったのを耳にしなかったのですか?”(サヒーフ・ムスリム)
ま た預言者はある時、猫を閉じ込めたまま餌を与えず、猫が自分で獲物を捉える事さえも禁じた女性が、その行為によって地獄に送られた逸話を語りました。そし てその一方で、砂漠で喉の渇きゆえに喘いでいた犬に水を与えた男が、その行為によって天国に入れられたことも語っています。
また預言者は、屠殺される動物の目前で刃物を研ぐ事を禁じています。またこれから屠殺しようとする動物の前で、他の動物を屠殺する事も禁じられました。この事実は預言者による次のハディースにおいて明確にされています。
“神は全てのことにおける慈悲を呼びかけられている。だから殺生する時、屠殺する時は慈悲深くありなさい。苦しみを和らげるため、刃物は研いでおくようにしなさい。”(サヒーフ・アル=ブハーリー)
また教友たちの一人は、ある事件についてこう伝承しています:彼らが預言者と旅路にあった時、ひな鳥と一緒にいた親鳥を見つけ、それらを親鳥から取り上げました。すると親鳥が追いかけて来て両羽をばたつかせたので、預言者はこう言いました:
“この鳥の子供を取り上げて、それを悲しませているのは誰か?直ちにそれらを親元へ返してあげなさい。”(サヒーフ・アル=ブハーリー)
動物の権利は預言者によって確証されています。彼は、生き物を標的にする者は誰であっても呪われると言いました。また、動物たちにも感覚が備わっているゆえ、それらを血まみれになるまで喧嘩させることは、その苦痛ゆえに固く禁じられています。
イ スラームにおける慈悲の概念は包括的なものであり、あらゆる創造が自分たちの間において、そして神に対しても繋がっているのだという相互関連を強調しま す。慈悲は神を起源とし、かれによりあらゆる生物に与えられています。動物は人間と同様にお互いに慈悲を示し、他者と調和の取れた共存をし、このような慈 悲を示すことによって、それら自身も神による更なる慈悲を与えられるのです。こういったイスラームの観点は人々の間にある障壁を取り除くことを促してお り、それは同様に、生命と文明の根底に築かれた基礎でもあるのです。