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アダムの物語(5/5):最初の人間と近代科学

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1820 2015/05/27 2024/12/18

イスラームにおいては、神への信仰と近代科学知識との矛盾は発生しません。実際、中世では何世紀にも渡り、ムスリムたちが科学的知識の研究において世界の最先端を走っていたほどです。約14世紀も前に啓示されたクルアーン自体も、近代科学に支えられる事実と表象に満ちています。ここでお話しするのは、それらの内の三つについてです。それらの内、言語の発達とミトコンドリア・イヴ(遺伝学)は、科学の研究において比較的新しい分野です。

クルアーンはムスリムについてこう述べます。“…天地の創造について熟考する者…”(クルアーン3章191節)

熟考の対象の一つとしては、このように述べられています。

 “実に、われは泥から人間を創ろうとしている。”(クルアーン38章71節)

実 際、土に含まれている多くの元素は人間の身体にも含まれています。 陸生生物にとって最も重要な構成要素は、大地の上層部にあります。あの黒ずんだ薄い層には有機的に豊かな成分を含んでおり、植物が根を広げるのに適してい ます。この重要な層の土中において、微生物はミネラルという価値ある資源を合成し、その周囲と上部の無数の生物へと提供するのです。

ミネラルとは地中に存在する無機質な元素のことであり、人間の身体はそれを生成することが出来ません。それは身体機能において重要な役割を果たし、生命と健康の維持に必要なため、必須栄養素とも呼ばれます1。ミネラルは、研究所や工場などで人工的に生成することも出来ません。

細胞の質量の内、65〜90%は水で構成されていますが、水(H2O)は人体の大半を占めています。したがって、人体の質量の大半は酸素であるということになります。そして有機分子の基本単位である炭素がその次にきます。人体の質量における99%は、酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リン2といった、たった6つの元素によって成り立っています。

人 体には、地表にあるほぼ全てのミネラルが含まれています。それらはイオウ、カリウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、モリブデン、クロム、プラチナ、硼素、 シリコン、セレニウム、フッ素、塩素、ヨウ素、マンガン、コバルト、リチウム、ストロンチウム、鉛、バナジウム、ヒ素、臭素などです3

次の節も熟考に値するものです:

 “かれはアダムにあらゆるものの名を教え…”(クルアーン2章31節)

ア ダムはあらゆるものの名称を教えられており、理性の力や自由意志が与えられていました。彼はものごとを分類する方法、それらの有益性を理解する方法を学ん でいたのです。神がアダムに言語能力を教えたというのは、このようなことなのです。つまり、かれはアダムに、問題の解決のために知識を応用し、目的達成の ために計画を立てて決断することが出来るよう、いかに考えるべきかを教えたのです。アダムの子孫である私たちは、この世に存在し、最善の方法で神を崇拝す ることが出来るよう、これらの能力を受け継いぎました。

言語学者たちによれば、現在世界には三千の独立した言語が存在しており、ある言語の話者は別の言語を理解することは出来ませんが、これらの言語は根本的には非常に似通っており、各自の「人間語」を話すことは出来るのです4

言語とは符号(単語やジェスチャー)を組み合わせて意味のある文を作るための複雑な規則を学ぶことに関わる、特別なコミュニケーションの形です。言語の存在は、単語と文法という二つの単純な原則の上に成り立っています。

単語とは、音、符号、意味の恣意的な組み合わせです。例えば英語の単語である「cat」 は、実際の猫には見えませんし、その音もしませんが、私たちは子供の時にこの文字の組み合わせが猫であると暗記してきたため、そう認識します。文法とは、 単語を成句や文章として成立させるよう組み合わせる規則のことです。三千もの言語のすべての話者が、みな例外なく言語上の四つの規則を学ぶことは、驚くべ き事実でしょう5

第 一の言語規則は音韻論です。それはつまり、意味のある発音に関わるものです。音素は基本的な発音であり、私たちは音素を組み合わせて、単語を形成させま す。それは第二の言語規則である語形論を学ぶことにより達成されます。語形論とは、意味のある単語や発音として音素を組み合わせる体系です。形態素とは、 言語において意味を持つ最小の言語単位のことです。単語を構成する形態素の組み合わせを学んだ後、私たちは文章に意味を持たせることが出来ることを知りま す。第三の言語規則は統語論、または文法と呼ばれるものです。これは、単語など意味をもつ単位を組み合わせて文を作る文法的規則を意味します。第四の言語 規則である意味論は、様々な文章や文脈における単語や成句の意味を特定させるものです。

世 界のどこに住んでいるかに関わらず、すべての子供たちは同じ四つの言語学的段階を踏むのです。それは内的な言語的要素によるものであり、それらの要素は私 たちが発音したり、言語能力を得たりすることの手助けとなるのです。著名な言語学者であるノーム・チョムスキーは、すべての言語では共通する普遍的文法が 共有されており、子供たちはこの普遍的文法を学ぶための知的プログラムを受け継いでいると述べています6

熟考に値する第三の節は、子孫繁栄に関するものです。

 “人々よ、あなたがたの主を畏れなさい。かれはひとつの魂(アダム)からあなたがたを創り、またその魂から配偶者(イヴ)を創り、両人から無数の男女を増やし広められた方である。”(クルアーン4章1節)

すべてのmtDNA系統(アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ)が一人の女性に行き着くという発見は、一般的に「ミトコンドリア・イヴ」論と呼ばれています。一流科学者たちや7、最先端を行く研究者たちによると、地球上の人間全ては、ある特定の遺伝情報であるミトコンドリア・DNA(mtDNA)を一人の女性まで遡るとされています。「ミトコンドリア・イヴ」のmtDNAは、母親からその娘(男性も保有しますが、遺伝はされません)へと何世紀にも渡って受け継がれてきており、現在では全ての人々が共有しているのです8。それは上記からも推測出来るようにX染色体から遺伝されるため、一般的にイヴ論と呼ばれます。科学者たちは同様に、父親から息子に受け継がれ、母親のものとは再結合されないもの、すなわち男性のみによって遺伝されるDNAのY染色体(「アダム論」とでも呼ばれるべきものでしょう)も研究中です。

こ れらは、神がクルアーンを通して私たちに対し、熟考することを促す多くの驚異の内の三つに過ぎません。全宇宙は神によって創造され、かれの法を従い、守る のです。したがってムスリムは知識の探求、宇宙の神秘、そして神の創造における「しるし」を見つけることを奨励されているのです。



Footnotes:

1 (https://www.faqs.org/nutrition/Met-Obe/Minerals.html)

3 Minerals and Human Health The Rationale for Optimal and Balanced Trace Element Levels by Alexander G. Schauss, Ph.D.

4 Pinker, S., & Bloom, P. (1992) Natural Language and natural selection.  In Gray.  P. (2002).  Psychology.  4th ed. Worth Publishers: New York

5 Plotnick, R. (2005) Introduction to Psychology.  7th Ed .Wadsworth:USA

6 Gray.  P. (2002).  Psychology.  4th ed. Worth Publishers: New York

7 Douglas C Wallace Professor of Biological Sciences and Molecular Medicine.  At the University of California.

8           Discovery channel documentary – The Real Eve.

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